お父さんと姉がいけない事をしていると知ったのは最近の事だった。僕は中学一年生、姉は 高校一年生で、最初はショックだったけど次第に いつも影で隠れて見ていた。姉は僕の母代わりだったから、なんとなく自然にも思えた。
 お母さんは癌で死んだらしいけど、僕は顔を知らない。

 いつもの様に覗き込むと、姉は父を受け入れていた。
「お父さん……お父さん……
 色白の胸が薄暗い中にも、浮かび上がって見える。初々しい桜色の乳首も微妙な色合いで可愛らしかった。
 父が姉の乳首に吸い付くと
「ああ……
と声を小さく漏らした。
 しかし今夜の父と姉は様子が違った。姉が泣き始めたのだ。

 父が必死に、大丈夫心配いらない。ヒロ(僕)の事は俺にまかせろ。
 何の事だろう? 僕は興奮しながらも不安になった。
「だから、安心して病院に行け? 治ったらみんなで旅行に行こう?」
「先生が、体が二ヶ月も持たないって……
「お父さんを信じろ。絶対、大丈夫だ! 愛している」
「うん……動いて……あああっ、好き! ああっ!」
 父は涙ながらに、姉を抱きしめると動き始める。細い裸体が、反り返り、切なげな声を上げる。僕は思った。姉はもう長くはないという事を。

「じゃあ、病院で検査に行ってくるね? ヒロ? すぐ帰ってくるって」
 姉は長い髪を束ねて、スポーツバッグを握っていた。いつもの無邪気な姉だった。

 父の車に姉が乗り込むと、ひたすら笑顔で僕に手を振った。僕は胸を詰まらせ、涙をこらえる。
 これが、姉の姿を見た最後だった……

 END